あつ~い美術館めぐりからの帰還

土曜日は美術館をふたつ巡った。
行ってきたのは東京国立近代美術館の『高畑勲展』とBunkamuraの『ミュシャ展』のふたつ。
この暑い中ふたつも巡るのは思っていた以上に大変だったが、充実した一日となった。
同伴者は友人のT君。
彼は絵描きなので芸術に関して「あーだこーだ」と議論しながら巡ることができる(どちらも偏った知識しかないけど)。

最初に向かったのは『高畑勲展』。
高畑勲展』は規模が大きく内容も充実していた。
高畑勲の仕事を網羅しており、『太陽の王子ホルス』『アルプスの少女ハイジ』『火垂るの墓』などの設定資料や絵が色々飾られている。
詳しくは公式サイトを確認されたし。
https://takahata-ten.jp/

脚本や絵コンテやイラストボードや原画といった資料がいろいろ展示されており、わたしたちがいつもしている「作画担当者当てっこゲーム」しながら回遊してゆく。特にありがたく感じた展示は宮崎駿のイラストボードで、宮崎ファンのわたしたちはすっかりご満悦であった。
高畑勲展』のビジュアルブックを購入し退場する。
十時過ぎに入場して退場したのは十二時であった。二時間も居たとは少し驚きである。

昼食を食べて、恵比寿に向かう。
実は『ミュシャ展』に行く前に恵比寿の「東京写真美術館」に行ったのだ。
だから本来は美術館は三つ巡る予定だったのだが、展示期間を間違えていたので、お目当ての展示会はすでに終了していたと着いてから気が付いた。

うなだれながらベンチで小休憩しつつ、「
恵比寿ガーデンプレイス」の建築について語り合う。
恵比寿に向かう途中で彼に恵比寿に来たことがあるかと訊ねると「一回あるかないか」と言った。
恵比寿に着いて「東京写真美術館」まで歩いてるときに恵比寿の感想を訊くと「恵比寿の人間のセレブもどき感が気に入らない」「この西洋風の建築は贋作にしてもちゃっちい作りである」と酷評していた。
お気に召さなかったらしい。
わたしは彼ほど恵比寿に文句はないが、たしかに「恵比寿ガーデンプレイス」の奥にある鑑賞用なのかよくわからない洋館のデザインはあまりよくないと思う。
わたしたちは建築についてあまり詳しくないけど、優れたデザインの美術館とか「旧〇〇邸」といった西洋風の建物をいろいろ見てきたので、少しだけ(ほんとに少しだけ)建築にこだわりがある。
わたしのお気に入りは「神戸女学院大学」である。去年彼と行った「関西ヴォーリズ建築巡り」の最大の目的地が「神戸女学院大学」で、期待をまったく裏切らない美しい建物だった。

小休憩を終えて渋谷のBunkamuraに向かう。
疲れはほとんどとれなかった。暑すぎるもの。
渋谷は相変わらずの人混みで、Bunkamuraに着く前にノックアウトされてしまいそうだった。
けど、去年の暑さより幾分かマシだと思えたのは、最近入手した「乙女グッズ」手持ち扇風機があるからである。
これは大変な優れモノで、うちわを使って過ごしていたのが馬鹿らしくなるほどである。仕事に行くときもコンビニに行くときも手放せない。
しかし渋谷は別の意味で冷たい街のようで、わたしが扇風機の風を浴びながら歩いていると、渋谷のギャルから「男のくせに手持ち扇風機使ってる~」と暴言を吐かれた。
なんと失礼な。
男でも手持ち扇風機を使ったっていいじゃないか(だって涼しい)。
そういうことは思っても口にしてはいけない。
おそらく暑さのせいで自制が効かなくなってしまったのだろう。きみも手持ち扇風機を買いたまえ。
バカなおじょーさんを無視して、歩いてゆく。

ミュシャ展』は大盛況だった。
やはり女性の人気が高いようで、客の男女比でいうと女性が六割を占めていた。
わたしは特別ミュシャが好きというわけではないので、ミュシャの年表などは飛ばして「あ、この絵はクリムトっぽい」などと思いながら回遊していった。
というか、疲れてしまって頭が全然働かない。
やはり美術館を数件回るのは無謀だったかもしれない。
グッズ売り場に入ると雰囲気がガラリと変わり、本屋の少女漫画コーナーみたいな空気になっていた。
なぜなら、ここに入った瞬間男女比が急激に変化し女性が八割を占めていたからである。
なんだか居心地が悪いので逃げるようにBunkamuraを後にする(たぶん他の男性諸君も逃げたのだろう)。

一息つくためにカフェかファミレスに入ろうと思ったが、渋谷に空いている店があるわけもなく、少し歩く羽目になるけど表参道のほうに向かってサイゼリヤで休憩した。
あまりお腹は空いていなかったのでデザートを食べながら、今回の美術館めぐりについて回想しながら談義。

せっかくだから「青山ブックセンター」に行こうと提案する。
T君はまだ一度も行ったことがないとのことなので、「しめ」として「青山ブックセンター」へ。
青山ブックセンター」はいつ行っても楽しい本屋である。
それに、表参道駅はわたしの定期券の圏内なので表参道駅まで行くと交通費が浮くし、乗り換え的にも渋谷から帰るよりも楽になる(彼は家から遠くなる)。

青山ブックセンター」に行って写真集を見る。
T君もカメラを始めたので、とりあえず『写真の読み方(名取洋之助)』を買わせてから、写真集を物色する。
写真集を物色しているときの楽しみは「自分とおなじ匂い」のする写真を見つけることである。それは自分の「好み」とは違うのが面白い。
マーク・コーエンという人(わたしは知らなかったけど有名なのかしら)の写真集『MEXICO』がよかった。
値段を見ると、八千円。
また今度。

ようやく帰路に着いたときにはもう十八時をまわっていた。
脚はジンジンするし、服は汗くさいし、クタクタである。
帰宅してから今日の出来事をブログに書きとどめようと思ったが、お風呂から出てベッドでごろごろしている間に爆睡。
お盆は家でゆっくり映画でも観ながら過ごそう。