世界地図からの申し立て―「eyes wide open」―

世界地図とかわいそうなメアリー」では、世界地図がすぐに見られる環境について書いた。
世界地図の効能について、もうひとつ発見があることを思い出した。
世界地図があると「視野が広がる」。
この発見は、以前に旅行を計画したときに世界地図がチラリと視界に入ったのがきっかけである。

わたしは出不精なので旅行をすることがあまりない。そのせいで「旅行でもしようかな」と考えても候補に挙がってくる土地が自分の近隣ばかりになる。どれだけ視野を広げても日本の最北と最南まで。無意識の内に金銭と言語の壁を勘定し、日本国内に留めてしまっている。
世界地図はそのことに「待った」をかけた。
「ちょっと君、どうして構想段階なのに候補が日本国内だけなんだい?」と的確な問いを投げかける。
全くもってその通りである。
構想段階で制限を設ける必要はない。現実的な制限について考えるのは後の工程である。
"世界地図さん"と対面し、前々から行ってみようと思っていた国に指を指していく。
イタリア、バチカンチェコフィンランドウクライナ等々。ずいぶんと行きたいところが多いんだ。

妄想に耽る。
イタリアなら南部だ。シチリア島が見たい。行く前に『ニュー・シネマ・パラダイス』を見返そう。
バチカンに行ったらサン・ピエトロ大聖堂に行ってミケランジェロの『ピエタ像』を見よう。
チェコでは道端で人形劇が見られるらしい。カフカの博物館もある。
フィンランドは宣伝のためにムーミンをこれでもかというくらいプッシュしており、彼は過労死寸前だという。
ウクライナチェルノブイリは生きてるうちに一度行こうと決めていた。人間が去ってからは草木は生い茂って、動物たちの楽園と化しているらしい。被爆する可能性があるから、行くのは最後がいいだろうか――。
…………と、ウインドウショッピング的な楽しみ方で愉快な時間を過ごす。

その後、わたしは実際に旅行をした。
関西への旅行になった。